近所のスーパーでハーゲンダッツの特売があった。

ハーゲンダッツ――それは我が家において、単なるアイスクリームの枠を超えた「聖域」である。家族全員がその濃厚な誘惑の虜であり、たとえ冷凍庫の最深部、保冷剤や凍った肉の塊の背後に隠したところで、子供たちの鋭い「ダッツ探知機」からは逃れられない。見つかれば最後、跡形もなく食い尽くされるのが日常の風景だ。

しかし、今日は違った。私は戦略を練った。

子供たちに「買ったよ」などと口が裂けても言ってはいけない。伝えた瞬間に光速で消費され、私の口に入るのは空になったカップの残骸だけになるだろう。

私は静かに、しかし大胆に、一通りのラインナップをカゴに放り込んだ。締めて3,000円。これは「大人の、大人による、大人のための秘密の贅沢」なのだ。

作戦決行:静寂のデザートタイム

夜、作戦は第2フェーズへと移行した。

まず、子供たちには「いつもの」ありきたりなアイスを与え、満足させる。案の定、彼らはアイスを平らげると、吸い寄せられるようにiPadの画面へと没頭し始めた。

今だ。この静寂こそが、我々夫婦に与えられたゴールデンタイムである。

冷凍庫から慎重に取り出したのは、「キャラメル」と「リッチキャラメル」。

あえて似た系統を選んだのは、夫婦でその繊細な差異を愉しもうという、いかにも「分かっている大人」らしい知的好奇心からだった。

「さて、どう違うんだろうね」

「楽しみだね、リッチっていうくらいだから、相当な違いがあるはずだよ」

期待に胸を膨らませ、まずは「リッチキャラメル」を一口。

……うまい。濃厚なキャラメルの香りが鼻を抜ける。

続いて「キャラメル」を一口。

……これもうまい。文句なしにハーゲンダッツのクオリティだ。

しかし、ここで問題が発生した。

「……違い、わかる?」

妻が小声で私に問う。私はスプーンを口に含んだまま、沈黙した。

正直に言おう。どちらも最高にうまい。だが、何がどう違うのかと問われると、私の貧弱な語彙力と味覚センサーでは「どちらも甘くてキャラメルの味がする」という平坦な結論しか導き出せなかったのだ。

「こっちの方が……ちょっと濃い気がするかな?」

「えっ、私はこっちの方が甘みが強い気がするけど……」

大人の余裕を見せるはずが、我々は暗闇の中で出口を探す迷子のように、曖昧な感想をぶつけ合うことしかできなかった。

突然の来訪者と、一閃の批評

その時だった。我々の煮え切らない会話を聞きつけたのか、あるいは甘い香りに誘われたのか、iPadの影から二人の小さな影がヌッと現れた。

「……何食べてるの? 私も食べてみたい!」

しまった、見つかった。

「大人の味がわかるわけないだろうが」と内心毒づきながらも、ここで拒んでは事態が余計にこじれる。私は諦めて「……どうぞ」と、二つのカップを差し出した。

娘が、まずは「キャラメル」をひょいと口に運ぶ。

数秒の静止。

次に「リッチキャラメル」をスプーンですくい、目を閉じて味わう。

そして、彼女は目を開けると、驚くほど冷徹かつ的確なトーンでこう言い放った。

「あのね、こっちの『キャラメル』はミルクの風味が強めにしてあるの。で、こっちの『リッチキャラメル』は、キャラメル自体の風味をキャラメルより強く出してあるんだよ」

……。

我々夫婦は絶句した。

娘はそれだけ言うと、用は済んだと言わんばかりに、再びiPadという名の自分の「巣穴」へと帰っていった。

敗北の味は、少し苦いキャラメル

彼女が去った後、我々は改めて言われた通りに食べ比べてみた。

……本当だ。

娘の指摘を意識した瞬間、霧が晴れるように個性が浮き彫りになった。

「キャラメル」は、確かにミルクのまろやかさがキャラメルと手を取り合い、優しいハーモニーを奏でている。対して「リッチキャラメル」は、キャラメル特有の香ばしさとコクが前面に押し出され、まさに「キャラメル尽くし」の攻めの姿勢を見せている。

その通りだ。ぐうの音も出ないほど、その通りだった。

「……私たち、3,000円分も買う資格、なかったのかもね」

自嘲気味に笑う妻の横で、私は最後の一口を飲み込んだ。

結局、我が家で最も鋭敏で、高級品の価値を正しく理解していたのは、iPadに夢中な子供たちの方だったのだ。大人という皮を被り、「隠れて食べる」というセコい策を弄した我々の味覚は、純粋な子供の舌に完敗したのである。

明日の朝食の時、少しだけ謙虚な気持ちで彼らに接しようと思う。

我が家の「真の食通」は、あの小さな背中たちなのだから。