「大丈夫、行けばあっさり終わるさ」

手術当日まで、私は自分にそう言い聞かせていた。平静を装い、家族の付き添いも断った。しかし、約束の13時15分が近づくにつれ、強がりのメッキはボロボロと剥がれ落ちていった。

10分前。静まり返った病室で、私は得体の知れない不安に飲み込まれそうになっていた。「やっぱり誰かにいてほしかった」という後悔が、冷たい波のように押し寄せる。迎えに来た看護師さんの顔を見て、ようやく「もう行くしかない」と腹をくくった。

想像を絶する「ライブ感」

人生で初めて経験する、局所麻酔での手術。

これが想像以上に過酷な精神修行だった。意識が鮮明にある分、手術室内の会話がすべて耳に飛び込んでくるのだ。

「麻酔、250にした?」

「いや、230くらいにしたはずです……」

(えっ、そこ曖昧なの!?)と、心の中で激しく突っ込む。

さらに追い打ちをかけるように、執刀医と助手の「あー、これはこうして。いや、そこじゃなくてさ、こんな感じでさ」というやり取り。ドラマのような綿密なオペを想像していた私にとって、それはあまりにも「出たとこ勝負」のようなライブ感に満ちていた。

カチャカチャと響く金属音、そして不意に響き渡る先生の怒声。

「電気メス!」

その瞬間、私の恐怖はピークに達した。顔も、手も、背中も、自分でも驚くほどの汗でじっとりと濡れていくのがわかった。

判明した衝撃の事実

スタッフの方からは「だいぶスムーズに進んだオペでしたよ」と声をかけられた。

時計を見れば、実際には30分足らず。しかし、神経を極限まで削り取られた私にとっては、40年超の人生の中で間違いなく「最も長い30分」だった。

そして、術後に明かされた事実は、私の予想を裏切るものばかりだった。

まず、長年私を悩ませ、お尻から飛び出していたアイツの正体。

ずっと「いぼ痔」だと思い込んでいたのだが、検査の結果、なんと**「ポリープ」**だったという。まさかこの歳で、自分の体にポリープが宿っていたとは。

予想外の「お土産」

さらに追い打ちをかけたのが、手術前後のやり取りだ。

もともと「肛門が狭いから広げるかも」と言われていたのだが、私は軟便気味な体質を考慮して、「広げすぎないように配慮してほしい」と切に願っていた。

しかし、手術が終わって先生から告げられた言葉は、あまりに無情だった。

「広げる気はなかったんだけど、手術中に裂けちゃった」

……そんなこと、あるのだろうか。

良かれと思って慎重にお願いした結果、まさかの「物理的な破損」という結末。ポリープとの別れを喜ぶ暇もなく、私は「切れ痔」という新たな悩みと向き合うことになってしまった。

嵐のあとで

手術が終わった今、ようやく一息ついている。

ポリープは去った。しかし、代わりにやってきたのは、裂けてしまった患部の痛みと、これからも続く通院生活だ。

人生、何が起こるかわからない。

あんなに怖かった30分を乗り越えたのだから、これからの通院くらいなんてことはない……と思いたいところだが、やはりお尻の悩みは尽きないものである。

とりあえず、今日だけは自分を褒めてあげようと思う。

あの汗だくの30分を、私は間違いなく戦い抜いたのだから。