入院日誌:病棟の天女と、香る枕と、止まった時間。三日目
昨夜、麻酔の魔法が解け始めた。
切れた瞬間に忍び寄ってきたのは、患部がシクシクと疼くような、
夜中にふと目が覚めたとき、そこには「天女」がいた。
完全看護とはいえ、傷口の処置からオムツの交換まで、
そんな献身的な看病のおかげだろうか。
手術3日目の朝、恐る恐る目を覚ますと、
今日から待望の「食事解禁」となった。
といっても、一日のスケジュールは拍子抜けするほど単調だ。
朝飯を食い、眠り、本をめくる。
昼飯を食い、眠り、スマホで動画を眺める。
夕飯を食い、また本を読み、眠る。
時折、看護師さんがやってきて僕の「ケツの傷」
病室特有の悩みだった「匂い」も、知恵で解決した。
妻に頼んで持ってきてもらったお気に入りの香水。
人間、慣れとは恐ろしいものだ。
あれほど気になっていた同室のおじいさんたちの独り言も、
けれど、平穏が訪れると今度は別の敵が現れた。
「退屈」という名の病だ。
まだ3日目。されど3日目。
あまりにも単調で、あまりにも静かすぎる。
窓の外に広がる、当たり前だった「シャバ」の空気が恋しい。
あの騒がしい工場、家族の笑い声、冷えたビール。
何もしなくていい贅沢を噛み締めるべきなのだろうが、
天女のような看護師さんに感謝しつつ、香水の香りに身を委ね、
早く、あの騒がしくも愛おしい日常へ帰りたい。