「ブログなんて簡単ですよ!初心者でも三十分あれば、立ち上げから初投稿までいけます!」
画面の向こうで、某有名YouTubeチャンネルの学長が、いつもの快活な調子で呼びかけている。その言葉を信じて、重い腰を上げたのが一ヶ月前のことだ。しかし、現実はどうだろう。三十分どころか、一ヶ月が過ぎた今も、私はパソコンの前で「チンプンカンプン」という言葉を体現している。
情けないことに、画像の添付すらおぼつかない。クリック一つ、ドラッグ一つが、まるで未知の言語を解読するような苦行に感じられる。世の中の「初心者」という言葉の定義は、いつの間にこんなに底上げされてしまったのだろうか。
「やらなきゃ、やらなきゃ」
そう自分を急かす声は、頭の中で鳴り止まない。けれど、人間というのは現金なもので、どうしても「できないこと」からは無意識に距離を置いてしまう。マウスを握る手が重くなり、気づけば一週間、ブログの管理画面を開くことすら放棄してしまった。いわゆる「バックレ」を決めてしまったのだ。
家族には、本当のことなんて口が裂けても言えない。
夕飯の席で「ブログはどう?」と聞かれそうになれば、「いやあ、システムの調子が悪いみたいでさ」と、適当な言い訳を並べてとぼけ続けている。本当はシステムの問題ではなく、私自身の指先と脳がフリーズしているだけなのに。妻や子供たちの前で、父親としてのプライドを必死に守ろうとしている自分が、時々ひどく滑稽に思えてくる。
ふと、誰かに相談しようかという思いが頭をよぎるが、すぐにその選択肢は消える。私には、こんな技術的な悩みを打ち明けたり、操作を教えてもらったりできるような友人は皆無だ。結局、この四角い箱と格闘するのは、自分一人しかいないのだ。
けれど。
一週間の逃避を経て、私は今日、再びパソコンの電源を入れた。
なぜなら、今年は「何かを変える」と心に決めたからだ。
これまでの自分なら、ここで諦めていただろう。「やっぱり自分には無理だった」と笑って、元の平穏で変化のない日常に戻っていただろう。でも、それではいけないのだ。一つでもいい。人生においてプラスになる何かを、この手で掴み取りたい。そのために、今年は泥臭くもがくと決めたのだ。
立ち上げに三十分かかるのが普通なら、私は三ヶ月かかったっていい。
画像の添付に半日費やしたって、それが今の私の現在地なのだ。スマートにこなす必要なんてない。不器用なら不器用なりに、キーボードの隙間に落ちる埃を眺めながら、一歩ずつ進むしかないのだ。
明日の朝も、きっと私はパソコンの画面とにらめっこをしているだろう。
また同じところでつまずき、舌打ちをし、絶望的な気分になるかもしれない。それでも、逃げるのはもうやめた。できない自分をさらけ出し、もがき続けること。それが今の私にとって、自分を変えるための唯一の、そして最大の戦いだからだ。
「チンプンカンプン」の森を抜ける日は、まだ遠い。
けれど、今日ログインボタンを押せた自分を、少しだけ褒めてやりたいと思う。