近々、我々の部署に新しいメンバーがやってくる。

新卒でも中途でもない。社内で「宙ぶらりん」の状態だったTH君だ。

彼は、とにかく人から反感を買いやすい。というより、「いじめ」の対象になりやすい性質なのだと思う。私が入社する前の話だが、彼は高卒で入社して以来、およそ15年もの間、奴隷のような日々を強いられてきたらしい。

最初の7、8年は、直属の先輩からの凄惨なパワハラ。

言葉の暴力は日常茶飯事、手を出されることもあったという。

その先輩が退社し、ようやく平穏が訪れるかと思いきや、次に組んだ年上の後輩・TC(現在の課長だ)もまた、彼をいたぶった。前の先輩がTH君を奴隷のように扱う様を見て、「こいつはこう扱っていい人間だ」と学習してしまったのだろう。豹変したTCから怒鳴られ、蹴られ、また同じような年月を耐え忍んだという。

そして数年前、私がこの目で見た光景もまた、地獄の続きだった。

彼が次に組んだのは、年下の後輩・T君。

経験も歴もTH君が上だ。今度こそ彼が主導権を握るだろうと思っていたが、そうはならなかった。

T君は他部署で揉め事を起こし続けて流れ着いたトラブルメーカーだが、相手の弱みを見抜く嗅覚だけはずば抜けていた。

最初は小さなミスを突き、次はミスをするように誘導し、失敗を周囲に言い触らす。

徐々にTH君を孤立させ、周囲が彼に呆れ始めたタイミングを見計らって一喝する。

「おめー!なめてんじゃねーぞ!しっかりしろや!」

勝負は決した。そこからTH君の地獄が再開した。

一人がやり出すと、いじめは増長する。

複数人になじられ、ついには機械の影でT君に殴られている彼を見た。

今の時代、許されることではない。上司には報告したが、救いの手は差し伸べられなかった。

この会社は、弱い人間がずっと苦しみ続ける場所なのだ。

そんな「調教」を受け続けてきたTH君は、今や常に挙動不審だ。

そして今、彼は私の部署へやってくる。

上層部の狙いは透けて見える。悪知恵の働くT君からTH君を物理的に引き剥がし、私を「抑止力」として使おうという腹づもりだろう。

だが、そんなに上手くいくものだろうか。

長年刻み込まれた彼の怯えと、現場に染み付いた歪みが、そう簡単に消えるとは思えない。

まあ、考えても仕方のないことか。

問題が起きた時に、その都度考えるしかない。

ものづくりの底辺という場所は、どうしてこうも歪んでいるのだろう。