やる気が起きず、やるべきことから目を背け続けてしまったこの一ヶ月。

「忙しくて手が回らない」という都合の良い言い訳を盾に、私は一体何をしていたのだろうか。日々の家事も、仕事も、ただ最低限のルーチンをこなすだけで精一杯だった。

しかし、今日でその停滞は終わりにしよう。

後悔の念を一度リセットし、自分を律するために、今日から日々の出来事や思考を日記として書き留めていくことに決めた。まずは、私の仕事場を取り巻く「異国の風」と、そこにある厳しい現実について整理しておきたい。

異国から届く覚悟と、変わりゆく風潮

我が社では、外国人技能実習制度を利用して、海外から多くの若者を受け入れている。

彼らは言葉も通じない、文化も習慣も全く異なる日本という異国の地に、文字通り身一つで飛び込んでくる。日本人の就職活動であれば、事前に会社見学を行い、社内の雰囲気を確認した上で入社を決めるのが当たり前だが、彼らにそんなプロセスはない。現地での面接を経て、いきなり配属先に放り込まれるのだ。

その決断力と、未知の世界へ踏み出す勇気には、いつも頭が下がる。

やってくるのは主に中国やタイ、モンゴルといったアジア圏の人々だ。面白いことに、言葉が通じなくても、彼らは驚くべきスピードで仕事を吸収していく。身振り手振り、そして共通言語である「数字」を駆使し、数ヶ月も経てば立派に戦力として仕上がっていくのだ。ただ、不思議なことに仕事は覚えるが、日本語自体を積極的に覚えようとする姿勢はあまり見られない。それもまた、彼らにとって日本は「暮らす場所」ではなく、あくまで「稼ぐ場所」であるという割り切りの表れなのかもしれない。

しかし、最近になって彼らの雰囲気に明らかな変化を感じている。

かつて聞いていた話では、こうだった。

「実習生の受け入れには、日本人の新卒を雇うよりコストがかかる。だが、日本人の新卒は入社翌日に辞めるリスクがある。対して実習生は覚悟を決めて来日しているから、簡単には投げ出さない。定着率という点では、彼らの方が信頼できる」

 そんな通説が、今、音を立てて崩れ去ろうとしている。つい先日も、驚くような出来事があった。東京での3ヶ月に及ぶ研修を終え、意気揚々と我が社に配属された5人の実習生。しかし、配属初日に彼らが口にしたのは、期待に満ちた言葉ではなく、拒絶だった。

思っていた仕事と違った

ホームシックになったから、もう国に帰りたい

結局、5人中4人が、配属からわずか2日足らずで日本を去っていった。

この急激な変化の原因は何だろうか。記録的な円安によって、日本で働く金銭的なメリットが薄れてしまったからか。あるいは、私たちの業種がいわゆる「3K(きつい、汚い、危険)」に該当し、今の時代の若者には耐え難いものになってしまったのか。

もっとも、日本人の中途採用者も、1日、長くて1週間で姿を消すのが常態化している。そう考えれば、国籍を問わず「我慢して働く」という価値観そのものが過去の遺物になりつつあるのかもしれない

トラブルの絶えない日常と、その先にある情熱

彼らとの日常は、決して平穏ではない。文化の壁、そして共同生活という特殊な環境が、時に激しい火花を散らす。

これまでにも、数え切れないほどのトラブルに対応してきた。些細な仲たがいからバールを振り回しての殴り合いに発展しそうになったこともあれば、怪しげな副業の勧誘にホイホイとついて行ってしまい、警察から連絡が入ったこともある。またある時は、寮内での大喧嘩で部屋のガラスが粉々に割れ、血だらけの状態で私の元へ「仲裁してくれ」と駆け込んできたこともあった。

そのたびに頭を抱え、対応に奔走し、「もう勘弁してくれ」と毒づくこともある。

しかし、それでも私は、彼らを見捨てる気にはなれないのだ。

言葉の壁にぶつかり、ホームシックに震え、それでも現場に立てば泥にまみれ、汗を流して必死に仕事を覚えようとする。その姿の根底にあるのは、家族のため、あるいは自分の未来を切り拓くための、剥き出しの情熱だ。

時に衝突し、時に迷走しながらも、日本という地で必死に生きようとする彼らの涙と汗を、私は一番近くで見ている。

明日への決意

振り返ってみれば、私がこの一ヶ月間「やる気が出ない」と停滞していた時間は、彼らにとっては命がけで生き抜いている時間だったのだ。

「2日で帰る」と言って去っていった若者たちも、その決断に至るまでの葛藤はあったはずだ。そして、今もなお現場で踏ん張っている彼らは、私が思っている以上に強い意志を持っている。

彼らの騒々しくも力強いエネルギーに触れていると、いつまでも塞ぎ込んでいる場合ではないと痛感させられる。トラブル対応で神経をすり減らすこともあるが、彼らが必死に汗を流している以上、受け入れる側の私もまた、背筋を伸ばして彼らを全力でサポートし、共に汗を流さなければならない。

明日からは、滞っていた事務仕事も、先延ばしにしていた家事も、一つずつ片付けていこう。

彼らの剥き出しの生命力に負けないよう、私も自分の日常を取り戻していく。

異国の地で、時には血を流し、時には涙を流しながらも戦う彼らを、私はこれからも応援し続けたい。そしてその姿を、この日記にしっかりと刻んでいくことにしよう。