視界は、白く煙っている。

この作業場に充満しているのは、数十年分の埃と、何かが巻き上げた微細な粉塵だ。防塵マスクをきつく締め直すと、自分の荒い呼吸音だけが耳元で反響する。フィルター越しの酸素は薄く、吸い込むたびにゴムの匂いが鼻を突いた。

昨日直したバケツが、隅の方で力なく転がっている。

そして今日、私の前には歪んだ釘の山がある。

金槌を振るうたびに、乾いた粉塵がふわりと舞い上がり、わずかな光に照らされてキラキラと輝く。マスクがなければ、喉の奥までこの「無意味な時間」の残骸に汚染されてしまうだろう。

誰がやっても結果は同じ。誰がやってもいい仕事。代替え可能な仕事。

これが今日の自分の仕事だ。

コン、コン。

厚い手袋越しに伝わる、硬い鉄の感触。

真っ直ぐに直された釘を横に置く。その一本が、また粉塵を被って白くなっていく。

防塵メガネの縁に溜まる粒を見つめながら、ふと思う。この粉塵まみれの工場で、自分もまた、ただの古い設備の一部として風化を待っているのではないか。

マスクの中で、舌が乾く。

外の新鮮な空気を吸いたいという欲求さえ、今はもう贅沢すぎる気がした。

ただ、次の釘を手に取る。

カチリ、と金属が触れ合う音だけが、淀んだ空気の中に虚しく消えていった。