最近、テレビやSNSで頻繁に取り上げられる「昭和レトロ」なスポット。色褪せた看板、独特のフォント、そして今では絶滅危惧種となった「レトロ自販機」が並ぶ光景は、大人には懐かしく、子供には新鮮に映るようです。
わが家でも、YouTubeでその存在を知った子供たちが「どうしても行ってみたい!」と大騒ぎ。そこで先日、重い腰を上げて、自販機食堂とゲームセンター、さらには宿泊施設が一体となった「伝説のレトロスポット」へと車を走らせました。
現地に到着すると、そこには期待通りのノスタルジックな光景が広がっていました。
何とも言えない独特の空気が漂う店内。中に入れば、うどんやそば、そしてオレンジ色の照明が食欲をそそる「ホットサンド」の自販機が鎮座しています。
「本当にあった!」と目を輝かせる子供たち。アルミホイルに包まれた熱々のパンが出てくるその珍しいギミックを、まずはじっくり観察。さて、いよいよ買ってみようか——そう思った矢先のことです。
「昭和」が過ぎる、ゲームセンターの衝撃
子供たちが自販機のボタンをどれにするか迷っている隙に、私は隣接するゲームセンターエリアをふらりと覗きました。しかし、そこで私は文字通り「唖然」として立ち尽くすことになります。
ふと目をやったUFOキャッチャー。キラキラとした最新のぬいぐるみやフィギュアを期待した私の目に飛び込んできたのは、なんと**「大人のDVD」や「女性ものの下着」**という、あまりにも生々しい景品の数々でした。
「そこまで昭和のままなのか……!」
脳内に、かつてロードサイドのドライブインや、場末の温泉街にあった「あの不穏な空気感」が蘇ります。当時はそれが当たり前だったのかもしれませんが、今は令和。しかも背後には、純粋な瞳を輝かせた我が子たちが迫っています。
その時です。案の定、下の子がこちらへやってきて「あ!UFOキャッチャーがある!やりたい!」と声を上げました。
心臓が跳ね上がりました。今まさにホットサンドを買おうとしていたところでしたが、のんびり小銭を入れている余裕など微塵もありません。ここで「何を景品にしているか」を悟られるわけにはいかないのです。私は反射的に子供の視線を遮るように立ち塞がり、精一杯のポーカーフェイスで言い放ちました。
「いや……ここには、お前たちが好きなキャラクターは一つも入ってないぞ。やめておこう」
なんとかガードに成功したものの、追い打ちをかけるように上の子が「えー、もっと中まで見て回りたい!」と、さらにディープな奥のエリアへ進もうとします。
もはや、丁寧な説明や、名物のホットサンドを買い求める時間は残されていませんでした。私は究極のカードを切ることにしました。
「頼む!パパ、急にお腹が痛くなってきた!もう限界だ、帰ろう!」
半ば強引に子供たちの手を引き、お目当てのホットサンドを買うことすら諦めて、文字通り「力技」で店を後にしました。
車に乗り込み、バックミラーに映る施設の看板を見ながら、私は冷や汗を拭いました。よくもまあ、このご時世にテレビ取材を受け、ファミリー層が訪れるスポットとして成立しているものだと、ある意味でその「徹底した昭和ぶり」に戦慄を覚えました。外観だけでなく、中身の倫理観まで当時のままフリーズドライされているとは……。
レトロ自販機との出会いは、一瞬の夢に終わりました。それを味わう平和なひとときを、すぐ隣で口を開けて待っていた「昭和の深淵」にすべて奪われてしまった一日でした。
もし、皆さんも「昭和レトロ」を求めて旅に出るなら、ご注意を。
そこにあるのは、綺麗な思い出だけではないかもしれません。