もうすぐ四年生が終わる。学校のカリキュラムもいよいよ大詰めだ。
親としては、この一年でようやく「自分で考えて勉強を進める」という習慣がついてくれるものと期待していた。実際、私も仕事や家事、そして下の子の世話に追われる中で、上の子に多少なりとも自立を求めていたのは事実だ。
「そろそろ自分でできるだろう」と、少し手綱を緩めたのが間違いだったのか。
ある日の夕方、娘はiPadでゲームに興じていた。聞こえてくるのは「あー、水曜日の漢字テスト嫌だな。点数取れなくても怒るなよ」という、なんともやる気のないボヤきだ。
「そんなものかな」と、私は夕飯の支度をしながら聞き流していた。しかし、ふと目に入った光景に、私は言葉を失った。
テーブルの上にあった「四年生の総まとめ漢字テスト練習プリント」。そこには、鉛筆の薄汚れた字の上から、さらに雑な赤鉛筆での書き直しが塗りつぶすように重ねられていた。プリントの至る所が修正だらけで、もはや何を書いているのか判別できないほど真っ赤になっている。
それを見て、私の中の何かがプツリと切れた。
「やることもやらずに、何を遊び呆けているんだ!」
気がつけば、普段は声を荒げないように気をつけている私が、怒鳴り散らしていた。
「やるべきことを終えてから好きなことをしろと言っているだろう! 親との約束も守らず、こんな中途半端な状態でテストを受けて、酷い点数を取ってきたら許さないからね!」
娘は何も言い返さず、不貞腐れた様子で二階の自室へと籠った。
廊下に響く足音を聞きながら、私は怒りと、それ以上に深い脱力感に襲われた。なぜこんなにも伝わらないのか。私の言動は彼女にとって、ただの小言に過ぎないのだろうか。
しばらくして、私は深呼吸をひとつしてから、冷めた気持ちを抑えて二階へ向かった。放置しても問題は解決しない。ドアを開け、淡々と現実を突きつけた。
「全部やり直す必要はない。丸が取れているところはいい。全く分かっていないところだけを、徹底的にやりなさい」
そう言って、彼女のプリントに青い丸をつけた。そこには、彼女の努力の足跡ではなく、ただの放置と無計画さが透けて見えた。
部屋を出ると、また大きなため息が出た。
家事の疲れよりも、心の摩擦による疲れがどっと押し寄せてくる。
「手綱を緩めた」と私は言ったけれど、そもそも彼女の手綱は、まだ私の手から離れていなかったのかもしれない。自立してほしいというこちらの期待は、まだ少しばかり早すぎたのだろうか。
四年生の終わり。それは娘にとっても、私にとっても、学びの過渡期だ。
今日はただ、お互いに感情の波に飲み込まれてしまっただけ。明日になれば、また新しいページを開くはずだ。そう自分に言い聞かせながら、私はキッチンへと戻った。
明日の朝、娘がどんな顔で起きてくるのか。今はただ、その平穏を願うばかりである。