普段は良好な関係を築けていると信じていた上司。仕事の進め方も合理的で、コミュニケーションも円滑。自分にとっても働きやすい環境だと思っていた。しかし今日、その信頼の前提を揺るがすような、あまりに感情的で不可解な出来事が起きた。

事の発端は、新規の納入業者に関する話題だった。私は以前からその案件について共有を受けていたが、どうやら上司の耳には届いていなかったらしい。組織の中では情報の伝達に多少のタイムラグや漏れが生じることは珍しくない。しかし、その事実を知った瞬間、上司の態度が豹変した。

「自分がその話を聞いていなかった」という事実が、上司の何らかのスイッチを押してしまったようだ。疎外感を感じたのか、あるいは面目を潰されたと感じたのか。怒りの矛先は、なぜかその案件とは全く無関係な、既存の業務へと向けられた。

「そもそも、あの仕事は自分のやるべき仕事じゃない!」

突然、上司は子供が駄々をこねるように、特定の業務を放棄する発言をし始めた。言い分は支離滅裂で、明らかに感情に任せたものだった。私は呆気にとられながらも、波風を立てないよう「のらりくらり」と相槌を打ち、彼の言い分を聞き流すことに徹した。しかし、そんな不毛な時間は10分も続き、私の忍耐も限界に近づいていた。

「……その件に関しては、上(上層部)にお話しいただけますか?」

私は努めて冷静に、やんわりとそう告げた。これ以上、私というフィルターを通して感情をぶつけられても、何の解決にもならないと判断したからだ。上司は渋々ながらも納得したようで、その場はようやく収束した。

その後、上司はさらに上の役職者と話をつけに行ったようだった。数十分後、戻ってきた彼の表情には、先ほどまでの荒々しい拒絶感は消えていた。どうやら上層部にあっさりと「丸め込まれて」帰ってきたらしい。結局、彼が「やらない」と息巻いていた仕事も、元の鞘に収まることになった。

その背中を見ながら、私は言葉にできないモヤモヤとした感情を抱えていた。結局こうなるのだ。感情に任せて周囲を振り回し、関係のない不満をぶつけ、最後はあっさりと引き下がる。その一連の騒動に費やされた時間と、私の精神的なエネルギーは一体何だったのだろうか。

「この人は、自分の感情をコントロールできない瞬間があるのだ」

今日の出来事は、私にその事実を突きつけた。普段が良好な関係であるだけに、一度見えてしまった「脆さ」や「幼さ」を無視することは難しい。明日からは、これまでと同じように接しながらも、心のどこかで一線を引いてしまう自分がいるだろう。尊敬と信頼のバランスが、少しだけ書き換えられたような、そんな苦い一日だった。