尊厳の落日 —— 40代、痔という名の深淵を覗く
「40歳を過ぎれば、大概の恥は乗り越えてきた」
これまでの人生で、
私は今、薄暗い部屋で一人、
事の始まりは、去年の年末だった。
当時から私の「奴(いぼ痔)」は、時折その存在を主張していた。
理由は、情けないほど単純だ。
あの診察室特有の、冷たくて不快な診察台。そこに横たわり、
しかし、私の沈黙とは裏腹に、身体の中の「奴」は着実に、
最初は「たまに顔を出す」程度だった。それがいつしか、
「指で戻せば、まだ暮らしていける」
その甘い見積もりが、今日、完全に崩壊した。
重い腰を上げ、ようやく訪れた病院。いつものように、
「最近はどんな具合ですか?」
医師の問いに、私はありのままを伝えた。
「毎回の排便後にいぼ痔が出るので、
その瞬間、診察室の空気が凍りついたのを肌で感じた。
医師が、驚愕と、あるいは呆れを含んだような強い口調で言った。
「……!? いったいいつから、そんなお尻になっちゃったの!? あなた、これ、もう手術するしかないよ!」
唖然とした。頭の中が真っ白になり、周囲の音が遠のいていく。
手術。その二文字が、あまりにも重くのしかかる。
日常生活は送れている。仕事もできている。だからまだ、
放心状態の私に、医師は追い打ちをかけるように言った。
「とりあえず、血液検査ともう一つ、新しい検査をしましょう」
その「新しい検査」こそが、
看護師に誘導され、別室へ向かう。そこは、
違和感の正体は、すぐに判明した。その便器の後ろには、
看護師が、事務的な、しかし残酷なトーンで告げた。
「あそこの便器にまたがって、下着を下ろしてください。
私は耳を疑った。
「……ここで、ですか?」
「はい。後ろから写真を撮りますから」
終わった、と思った。
他人に、自分が最も無防備で、最も野蛮な姿である「
「人間としての尊厳」という言葉が、
いっそ、
検査を終え、階段を降りる時の足取りは、
しかし、地獄はこれだけでは終わらなかった。
再び呼ばれた診察室。モニターに大きく映し出されていたのは、
鮮明すぎるその映像。そこに写っているのは、
「なんで、俺はこんな病気になったんだ……」
医師の説明を聞きながら、私はただ、自分を責め続けていた。
もっと早く来ていれば。あの日、あの時、勇気を出していれば。
怠惰と恐怖が、私をこの「尊厳の墓場」へと追い込んだのだ。
病院を出た時の外気は、酷く冷たかった。
今、私は酒を飲んでいる。
痔を悪化させる毒であることを知りながら、
今日のあの検査の光景、モニターに映し出された無惨な写真、
明日になれば、また現実がやってくる。
手術の恐怖、仕事の調整、そして自分の肉体と向き合う日々。
しかし今夜だけは、