今日もまた、私の元にはこれと言った仕事がない。
朝、今日の予定を確認しても…そこにあるのは空白ばかりだ。周囲の喧騒が遠くの波音のように聞こえる。みんなは誰かに必要とされ、自分にしかできない役割を全うしているというのに、私の時間だけが凪いだ海のように止まっている。
私が本当に欲しかったのは、ほんの少しの「重み」だった。
「これはあなたに任せたよ」という信頼の言葉。失敗すれば自分の責任になり、成功すれば自分の足跡として残るような、確かな手応えのある仕事。そんな重荷を背負うことができれば、この浮き沈みのない日々にも、ようやく意味が見いだせるような気がしていたのだ。
けれど、今日私に与えられた役割は、古びたバケツの修復だった。
どこにでもある、ありふれたブリキのバケツ。使い込まれて底が割れ、役目を終えようとしているその器を、ただ淡々と直す。それが今日の私のすべてだ。
この仕事に、私の名前は必要ない。私の感性も、これまで積み上げてきた経験も、ここでは何の役にも立たない。誰がやっても同じ結果になり、誰がやっても同じように感謝もされず、ただ「元通り」になるだけ。
「私でなくてもいいのだ」という思いが、薄い霧のように足元から這い上がってくる。
丁寧に割れ目を塞ぎながら、私は一体何を修復しているのだろう。バケツの穴を埋めるたびに、自分という存在の中にある空洞が、より一層際立っていくような気がしてならない。私がここで指先を動かしていても、いなくても、明日は何食わぬ顔でやってくる。そのあまりにも静かな事実に、胸が少しだけ痛む。
窓から差し込む午後の光は、驚くほど穏やかで優しい。
その柔らかい光に照らされるバケツを見つめながら、私は自分の居場所をどこに求めればいいのか分からずにいる。直されたバケツは明日には誰かの手に渡り、私のことなどすぐに忘れ去られてしまうだろう。
せめてこの修復の跡が、私という人間がここにいた微かな証しになってくれればいい。そんな淡い、けれどひどく悲しい願いだけが、冷えたバケツの底に溜まっていく。